今日はスピーチ文を引用したのもあるけど、ものすごく文章が長くなっているのでこれ以外については割愛します。
目次
ウクライナ ゼレンスキー大統領国会演説全文
ゼレンスキー大統領の日本向け演説について、ある程度しっかりした訳文が出てきました。以下に引用させていただきます。引用元については引用部分の最下部に明記。
スマホで読まれる方は、画面を横向きにして読むか、一旦飛ばして引用元を閲覧した方が良いでしょう。
引用元 【全文】ウクライナ ゼレンスキー大統領 国会演説 | NHK | ウクライナ情勢
注目点
注目したのは以下の点。
チェルノブイリ原発への言及
原発事故の規模については福島原発事故と並んで世界最大と言われており、依然放射性物質の管理などでは大きな問題を抱えている。旧ソヴィエト連邦での事故という印象が強く、ウクライナ領内のモノだと知らなかった人も大勢いると思う。
またゼレンスキー氏は原発の損傷に関する調査は何年もかかるだろうと言った。日本もそういう経験をした。「原発」への言及はつまり福島原発事故を経験した日本向けの題材ということだろう。日本人から共感を引き出せる。
サリンについての言及
サリンが使われるかは分からないが、実際劣勢に立たされているロシア軍が生化学兵器を使用する可能性は現実的なものになっている。こちらはオウム真理教によるテロ事件「地下鉄サリン事件」を意識したものだろう。
未だ生化学兵器テロは、日本の一件以外に起きていない。
『敵は世界最大規模の国だが、能力や影響力はそれほどではなく、モラルの面では最低』
こちらを指摘している人は少なかった。記事のここ(クリックすると対応部分に飛びます)である。
これ実は日本の軍歌『敵は幾万』の内容に由来しているのでは?というのが僕の直感。
歌詞の一部を引用する。
敵は幾万ありとても/すべて烏合の勢なるぞ/烏合の勢にあらずとも/味方に正しき道理あり/邪はそれ正に勝ちがたく/直は曲にぞ勝栗の/堅き心の一徹は/石に矢の立つためしあり
以上の歌詞では『敵が何万人いようと烏合の勢であって、仮にそうでなくても、自分たちは正義のために戦っている。悪は正義に勝ちづらく、頑固に戦えば石に矢が立つように、強大な敵にも勝利出来る』という精神が表されている。まさにピッタリだ。
演説前言及されるのではないかとされていた日露戦争についての具体的な言及はなかったが、軍事化への忌避感情がある日本に配慮して、このような形で遠回しな言及に及んだのではないだろうか。(あまりに遠回しすぎるような気もするが)
残忍な侵略の「津波」
津波、というと思い出されるのは東北大震災である。迫るロシア軍を津波と表現し、(比喩でない)津波災害に見舞われた日本に呼びかけた。
無機質に、理不尽に全てを奪い去っていく暴力の波。ウクライナは今これに直面している。
米国等での演説との相違
アメリカならばパール・ハーバーや9・11、フランスなら自由・平等・博愛、イギリスではシェイクスピアなど、それぞれその国でのいわば「ご当地演説」を行っているゼレンスキー大統領だが、日本での演説については事件等の出来事について具体的な言及をさけた。
しかし、「原発」「津波」「サリン」「津波」といったワードを強調して日本人に共感を呼び掛けている。また広島、長崎に触れずに核兵器についての話題も出している。忌むべき事象ならなおの事、あまり具体的な名称を例示することを好まず、「察する文化」が根強い日本人の特性についてしっかり考慮しているのだろう。
例外的措置として防弾チョッキやヘルメットを供与した日本だが、攻撃用武器を供与できない立場にあることをゼレンスキー氏は理解し、勇ましい話をするよりも静かに戦後の復興や支援を呼びかけることを選んだ。
邪はそれ正に勝ちがたく、直は曲にぞ勝栗の堅き心の一徹は石に矢の立つためしあり。